【行政書士監修】国際結婚手続きの流れと必要書類【まとめ】

更新日時:2020年6月21日

行政書士 佐久間毅

国際結婚・手続き・必要書類

0. はじめに

国際結婚・手続き・必要書類
申請者

外国人と日本人のカップルです。このたび、国際結婚をすることになりました。でも、何から手を付けてよいのか分からないんですよね。


国際結婚・手続き・必要書類
ひよこ先生

それじゃあ僕が、日本人と外国人が結婚する場合の手続き書類について解説するね!

 


【解説】

外国人のお相手とめでたく結婚することになった日本人の貴方、おめでとうございます! 国際結婚をすることになって、何をどうしたらよいのか途方に暮れているかもしれませんね。

 

でもご安心ください。お相手が配偶者ビザを取得するにはハードルがありますが、国際結婚そのものは、お相手の国や宗教によるものの、それほど大変ではありません。この記事では、海外生活の経験が少なくて、国をまたぐ法的な手続きに不慣れな方でも、自らの力で結婚を完了させることができるよう、徹底的にサポートします。

 

インターネット上には、国際結婚の経験のないライターさんが、ちょっと調べてテキトウにまとめたような安直なナビゲーションもあるようですが、アバウト過ぎる助言は、法的手続きである国際結婚をすすめるには、マイナスになることすらあります。

 

この記事は、日本一の利用者数(2020年1月現在、当社調べ)を誇る配偶者ビザ専門サイトを運営し、国際結婚を数多くサポートしてきた行政書士が、実際に国際結婚手続きを進めていくと躓くことになるあれやこれやについて、先回りしてきちんと解説しています。

 

だいじょうぶ、この記事のステップをきちんと踏んでいけば、必ずやお相手との国際結婚を無事にコンプリートすることができますよ!

 

【目次】

ステップ1:どこの国で先に結婚するのかを決めよう!

1-1.お相手の母国と日本の両国で、結婚手続きを完了させる必要があるの?

1-2.お相手が日本に住んでいるのに、先にお相手の国で結婚する必要はあるの?

1-3.お相手が海外に住んでいるとき、結婚のために日本に来てもらう必要はあるの?

1-4.第三国で最初に結婚する場合の注意点はなに?

 

ステップ2:日本で先に国際結婚手続きをする場合の流れと必要書類をおさえよう!

2-1.日本の市区町村役場で、国際結婚の必要書類を確認しよう!

2-1-1 市区町村役場に行く前に、少なくとも調べておくべきことは?

2-1-2 市区町村役場で求められる書類にはどんなものがある?

2-1-3 婚姻要件具備証明書とはなんですか?

2-1-4 国籍証明書とはなんですか?

 

2-2.市区町村役場によって、必要書類や求められる処理に違いがあるの?

2-2-1 外国の公文書はそのままでは日本で使えないの?

2-2-1-1 アポスティーユが必要な国

2-2-1-2 アポスティーユを取得できない国

2-2-2 外国文書の翻訳は自分でやってもよいの?

 

2-3.相手国の在外公館に結婚を報告しよう!

2-3-1 日本で成立した結婚を相手国に届け出るさいに必要な書類は?

2-3-2 戸籍謄本や婚姻届受理証明書の外国語への翻訳は、自分でしてもよいの?

2-3-3 在外公館に結婚を報告したそのあとは?

 

ステップ3:お相手の国籍ごとの結婚手続きを確認しよう!

3-1. フィリピン人との結婚手続き >>フィリピン人との結婚手続き

 

 

 

ステップ1:どこの国で先に結婚するのかを決めよう!

国際結婚手続き,書類,
申請者

私たちは、日本と配偶者の母国のどちらで結婚を成立させる必要がありますか?


国際結婚手続き,書類,
ひよこ先生

両方で成立させる必要があるよ。もし片方だけでしか成立していなかったら、もうひとつの国では「独身」ということになるから、何かと不都合が生じるよね?

 


1-1.お相手の母国と日本の両国で、結婚手続きを完了させる必要があるの?

【解説】

国際結婚は、日本とお相手の母国の両方で完了させる必要があります。例えば、外国で結婚を成立させたけど、日本の役所にその旨を報告しないと、日本の戸籍上は独身のままです。日本の市区町村役場と外国の役所は直接やり取りをしていないので、外国で結婚が成立しても、その事実を結婚当事者が報告しない限り日本の役所は知りえないからです。

 

どちらか一方の国でしか結婚が成立していないことを「跛行婚(はこうこん)」と言い、この状態では原則として日本の配偶者ビザは申請することができないですし、将来なにかと不便が生じることは想像に難くないはずです。不便だけなら良いですが、相続の時など不利益も多々被ることになりますので、必ず両国で結婚を成立させましょう。

 

1-2.お相手が日本に住んでいるのに、先にお相手の国で結婚する必要はあるの?

【解説】

日本にお相手が住んでいる場合、日本は結婚手続きが容易で分かりやすい国ですから、わざわざ結婚手続きが複雑な外国で先に結婚する必要は、通常はないといえます。それでも、お相手が日本の在留カード保有者なのに、まずお相手の母国に出かけていって、そこで先に結婚されるかたがいらっしゃることも事実です。

 

「お相手の外国人が今現在日本にすんでいるのに、お相手の国で先に結婚するケース」とは、日本で先に結婚をしてしまうと、お相手の国で「自動的に」結婚が成立してしまうことから、制度上、お相手の国に結婚を届け出ることができなくなる場合が多いです。

 

例えば中国アメリカは、日本で先に結婚が成立すると、その事実をもって「自動的に」自国でも結婚が成立する制度を採用しています。このため、日本で先に結婚すると、中国やアメリカには結婚を報告する制度が用意されていないので、中国やアメリカ政府から「結婚証明書」を取得することができなくなります。

 

それでも中国やアメリカでは「自動的に」結婚は成立しているのですから「跛行婚」ではありません。立派に日本と相手国で結婚は成立しています。しかし将来、中国やアメリカで結婚生活を送ることが予想されるときには、中国政府やアメリカ政府から結婚証明書が発行されないと、何かと不便が生じかねません。そこで、中国政府やアメリカ政府から結婚証明書をもらえるよう、あえて外国の結婚手続きを先行させる方がいらっしゃるのです。

 

いっぽう、韓国台湾フィリピンスペインなどの国では、日本で先に結婚を成立させたとしても、後から自国政府に結婚を届け出て登録することができる制度をとっています。この場合には、日本の国際結婚手続きを先行させても、自国政府から結婚証明書がもらえなくなるという不都合は生じません。

 

※豆知識(中国)

ちなみに、日本で結婚を先行させたあと、中国の公安において戸口簿の未婚表記を既婚に書き換えることはできます。そしてこのことをもって中国側の結婚手続きなのだと解説するインターネット上の情報がありますが誤りです。戸口簿には結婚相手の情報は記載されませんので、結婚したことは明らかになっても、どこの誰と結婚したのかは証明することができません。中国人と結婚したのかもしれませんし、アメリカ人と結婚したのかもしれません。したがって、この手続きを中国側の結婚手続きと呼ぶにはムリがあり、日本で先行して結婚すると中国でも自動的に結婚したことになること(別の言い方をすれば、日本で成立した結婚を、自国においてもそのまま結婚として認めること)は中国政府が文書で確認しています。

 

1-3.お相手が海外に住んでいるとき、結婚のために日本に来てもらう必要はあるの?

【解説】

日本の法律上は、結婚届は夫婦2人そろって提出しなければならないというルールにはなっていません。したがって、日本人同士の結婚でも、例えばお相手が入院しているようなときが典型ですが、結婚当事者の他方だけで結婚届を提出することができます。この事情は国際結婚でも同じなので、外国人と日本人がそろって結婚届を市区町村役場に提出する必要はありません。書類さえ整えば、日本人である貴方ひとりでも、日本の市区町村役場において国際結婚を成立させることができます。したがって、お相手が海外に住んでいるとき、制度上は、必ずしも結婚のために来日してもらう必要はないことになります。

 

しかしながら、実際には多くの方が、日本を先行させる結婚手続きのさい、お相手に日本に来てもらっています。これは、お相手が日本に来ると、いくつかの点で、結婚手続きがやりやすくなる場合があるからです。

 

例えば、日本の市区町村役場で結婚を成立させるためには、後にご説明する「婚姻要件具備証明書」という書類の提出が求められるのですが、この書類は日本の法律が一方的に要求している書類であるために、お相手の本国では発行していないことがままあります。そして、本国では発行していない国でも、日本にあるその国の在外公館ではこの書類を発行していることがあるので、来日して大使館に出向き、「婚姻要件具備証明書」を入手したほうが、てっとりばやいケースがあります。本国政府はいちいち日本の法律に対応してくれないが、出先機関である在日本の大使館や領事館は、日本の法律の要求に付き合ってくれているというわけです。

 

例えばアメリカの場合、在日アメリカ大使館において、日本に短期的に滞在するアメリカ人に対しても、婚姻要件具備証明書に相当するアフィダヴィットを発行してくれます。婚姻要件具備証明書とパスポート原本があれば、日本の市区町村役場でスムースに結婚が成立する可能性が高いので、アメリカ人のなかにはこの方法をとるかたが少なからずいらっしゃいます。

 

他方で、例えばベトナムのように、在日ベトナム大使館では、短期滞在のベトナム人に婚姻要件具備証明書を発行してくれない国もあります。2019年には、この発行してくれないはずの婚姻要件具備証明書を発行してもらうために在福岡ベトナム領事に賄賂をおくり、逮捕されたベトナム人女性の事件がニュースになりましたのでご記憶のかたもいらっしゃるでしょう。

 

まとめると、日本で国際結婚手続きを先行させる場合に、海外在住の外国人であるお相手は必ずしも来日される必要はないのですが、来日されると手続きがスムースにいくケースがあります。スムースにいくかいかないかは、お相手の国によります。

 

1-4.第三国で先に結婚する場合の注意点はなに?

【解説】

日本でもお相手の母国でもなく、結婚当事者に法的な関係のない第三国で結婚手続きを先行させる場合があります。

 

例えば、日本人とスリランカ人が留学先のアメリカで結婚される場合や、国際都市・香港で、日本人とドイツ人が職場で出会ってそのままご結婚されるケースなどです。

 

これらの場合には、カップルが出会った国で結婚をされるので、たとえその国が第三国であっても、その国で結婚をしたいというご事情があります。結婚式に参列するご友人や職場の同僚もその第三国にいるわけですし、何よりカップルがその国に滞在しているわけです。

 

しかしながらこの場合には、日本の法律でもなく、お相手の母国の法律でもなく、第三国の法律に照らして結婚することとなるので、日本の行政書士やお相手の母国の弁護士から情報をえるのではなく、第三国の弁護士から結婚についてのアドバイスをもらうことになりますので、言語的・情報的なハードルは高くなります。

例えば、日本の法律にしたがって、日本国内の市区町村役場でインド人男性とロシア人女性が結婚することを想起してみてください。日本語がうまくできない場合、日本の市区町村役場で四苦八苦されてしまうかもしれません。結婚当事者の母国でない第三国で結婚する場合には、言語的なハードルがないか検討しましょう。第三国の結婚手続きが宗教が絡んでくるなど複雑な場合には、いっそのこと日本に帰国して日本でご結婚されたほうが、百倍スムースに進むことも十分にありえます。

 

なお、第三国で先に結婚をされた場合には、一部の例外を除いて、お二人の母国に結婚が成立したことを事後的に報告する必要がありますので忘れないでください。

 

ステップ2:日本で先に国際結婚手続きをする場合の流れと必要書類をおさえよう!

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申請者

 

私たちは、日本で先に結婚手続きを進めることにしました。どうしたらよいですか?


国際結婚手続き,書類,
ひよこ先生

それじゃあ、日本を先行させる国際結婚手続きの流れ書類について説明するね!

 


【解説】

日本の国際結婚手続きを先行させることを、“ 日本で「創設的婚姻」を成立させる ” と言います。日本で結婚が完了したらその後に相手国に結婚を報告しますが、このことを「報告的婚姻」を成立させるという言い方をしますので覚えておきましょう。

 

2-1.日本の市区町村役場で、国際結婚の必要書類と下準備を確認しよう!

【解説】

日本の市区町村役場で創設的な婚姻をする場合の必要書類は、必ず事前に市区町村役場で確認しましょう。そしてその際には、必ずその書類にアポスティーユなどの下準備(処理)が必要であるかについても確認しましょう。

 

2-1-1 市区町村役場に行く前に、少なくとも調べておくべきことは?

【解説】

意外に思われるかもしれませんが、市区町村役場によっては、担当者が国際結婚手続きをよく知らないケースがあります。国際結婚がまだまだメジャーでない地方の市区町村役場では、数年に1件しか国際結婚が発生しないこともあります。そして、国際結婚自体はそれなりの件数発生している市区町村でも、あなたのお相手の国籍のケースは滅多にないということもあります。

 

このような場合、担当者はある日とつぜん窓口にあらわれた国際結婚当事者に当惑することになります。担当者自身が手続きをよく知らないからです。しかし知らないとは職務上言えないので、とりあえず「一般論」でお茶を濁すことになります。そこで、貴方がある程度先回りして調べておいて、市区町村役場の担当者を誘導してあげる必要があります。もし貴方が「一般論」に該当しないケースである場合、下調べをしておかないと、今度は貴方が困惑する側になってしまいます。

 

こちらから情報を提供しなくては適切な回答を引き出すことができない典型の1つが、婚姻要件具備証明書です。この書面の詳細は後述しますが、婚姻要件具備証明書は、①お相手の国籍、②お相手が日本国内にいるのか海外にいるのか、③日本にいるとしたら短期滞在者なのか中長期滞在者なのか、などによって、制度上取得できるのかできないのかが変わってきます。

 

例えば、ベトナムの場合、ベトナム本国では婚姻要件具備証明書は発行されませんが、在日ベトナム大使館では、中長期滞在者には婚姻要件具備証明書が発行されます。しかし、日本にいるベトナム人であっても、その方が短期滞在者であれば婚姻要件具備証明書は入手できません。つまり、同じベトナム人であっても、婚姻要件具備証明書を制度上入手することができる人もいれば、できない人もいるわけです。

 

このような外国政府に関する情報は、通常、市区町村役場では把握されていないことが多いので、すべての人に対して一様に「婚姻要件具備証明書を持ってきてください」と一般論で指導することが多いです。

 

したがって、あなたの結婚相手が婚姻要件具備証明書を用意できない状況にあるのであれば、私の結婚相手は婚姻要件具備証明書を入手できないので、どうしたらよいですか?と尋ねる必要があります。このように、こちらが市区町村役場の担当者を適切にナビゲートしてあげる必要があるのですが、そのためには、どの書類は入手できて、どの書類は入手できないのかということについて事前の下調べが必要になってくることがお分かりいただけるでしょう。

 

2-1-2 市区町村役場で求められる書類にはどんなものがある?

【解説】

日本で創設的に結婚をする場合の書類として、通常は市区町村役場において下記の書類が求められます。

 

「結婚届」・・・日本人同士の結婚でも必要ですよね。

 

② 日本人の「戸籍謄本」・・日本人が本籍地以外の市区町村役場に結婚届を提出するときに必要です。戸籍は本籍地にあり、戸籍をみないと日本人が結婚できる状況にあるのか判明しないため、本籍地以外で結婚するときには、本籍地から事前に取り寄せて、提出する必要があります。

 

外国人の「婚姻要件具備証明書」・・・外国人が結婚できる状況にあることを証明する書類です。外国政府が発行します。在日大使館や領事館が発行する場合には日本語で作成されるケースも多いですが、外国人の母国語で作成されている場合には、日本語訳も必要です。婚姻要件具備証明書については、項目をあらためてさらに詳しく解説します。

 

外国人の「国籍証明書」・・・通常は、パスポート原本を提示することが多いですが、中国のように「国籍公証書」などと称する独自の国籍証明書を発行している国もあります。もちろん、中国人のかたも、国籍公証書以外にパスポート原本も使用できます。外国で発行された証明書にはアポスティーユ(後述)などの認証が必要か確認しましょう。

 

外国人の「出生証明書」・・・外国人の両親の氏名を確認するために提出を求められることがありますが、婚姻要件具備証明書に記載されている場合は、不要とされることが通常です。多くの国で「Birth Certificate」と呼ばれている極めてメジャーな証明書です。中国では、「出生公証書」がこれにあたります。

 

2-1-3 婚姻要件具備証明書とはなんですか?

【解説】

婚姻要件具備証明書とは、日本先行の国際結婚手続きにおいては、結婚相手の外国人が、外国人の母国において、法律上の障害なく結婚することができることを証明する文書です。

 

ちょっと聞きなれない書面の名前ですが、「こんいんようけんぐびしょうめいしょ」と読みます。「婚姻要件」とは結婚をするための条件の意味であり、「具備」とは満たしているという意味ですので、結婚の条件を満たしていることについての証明書、という意味です。

 

日本先行での国際結婚手続きの場合、日本の市区町村役場に結婚届を提出するわけですが、日本の役所は、実はお相手の国の法律がどのような規定になっているのかを把握していません。主要国については、おおよそこのような法律のようだというレベルで把握していますが、相手の国の法律がいつどのように変更されたなどという情報を日本政府はリアルタイムで把握していないのです。もちろん、結婚の条件は国によってさまざまで、親の同意が結婚の条件になっている国もあります。

 

このため、日本先行で国際結婚手続きをするときに、結婚当事者が日本の市区町村役場に対して「婚姻要件具備証明書」を提出することにより、市区町村役場はお相手が結婚できる状況にあることを知り、安心して結婚させることができるようになります。

 

婚姻要件具備証明書の内容は、その国の婚姻要件をすべて列挙したうえで、その1つ1つを満たしていることを証明していなくても構いません。つまり、「本国法上婚姻をするについて何らの障害もないことを証明する」というように、すべての要件を満たしていることを一括または包括的に証明してもよいとされています。実際、日本政府が発行する婚姻要件具備証明書はそのような内容になっています。

また婚姻要件具備証明書は本国の「権限のある官憲」が発行している必要がありますが、在日大使館・領事館の領事などのほか、スウェーデンの牧師、デンマークの警察署長、ミャンマーやベネズエラの公証人などが発行権限者として認められています。

 

在日大使館・領事館で婚姻要件具備証明書の発行をうけるときは、国によって大幅に必要書類や必要期間が異なります。詳細は大使館ホームページで確認するか、大使館へ問い合わせて最新情報を確認しましょう。

 

2-1-4 国籍証明書とはなんですか?

【解説】

国籍証明書とは、文字どおり、お相手の国籍を証明する書類です。本国の権限ある官憲が自国籍を有することを直接に証明した「国籍証明書」のほか、パスポート原本や、国籍が明示された婚姻要件具備証明書もこれにあたります。このため市区町村役場によっては、国籍の記載がある婚姻要件具備証明書を提出した場合には、これとは別にパスポート原本を提示する必要はないとしているところもあります。国籍を二重に確認する必要はないためです。

 

二重国籍の場合は、戸籍謄本上の国籍の記載について、市区町村役場の担当者と確認しましょう。

 

2-2.市区町村役場によって、必要書類や求められる処理に違いがあるの?

【解説】

前述のように、国籍の記載のある婚姻要件具備証明書を提出すれば、別途、国籍証明書としてのパスポート原本を提出する必要は、理論上はありません。しかしながら、現実には、国籍の記載がある婚姻要件具備証明書を提出しても、別途、パスポート原本も必要と指導する市区町村役場が多いでしょう。

 

市区町村役場によって、どの書面の提出を求めるかには差異が生じえます。それは担当者の必要書類に対する理解度と思考力によるものなので、ある程度は仕方がなく受け入れるしかありません。また、お相手の国籍によっては前例がほとんどないようなケースもありますので、市区町村役場での創設的婚姻に必要な書類の確認は、インターネット上の情報で済ませるのではなく、実際に足を運んで担当者に直接確認しましょう。

 

また、それらの結婚に必要な書類に、どのような処理(アポスティーユなどの認証)が必要であるかについては、担当者により要求にバラツキがありますので、こちらも併せて市区町村役場で確認します。

 

2-2-1 外国の公文書はそのままでは日本で使えないの?

【解説】

はい、使えないのが原則です。なぜなら、日本の市区町村役場には、持ち込まれた外国の公文書が本物であるか、判断する能力がないからです。(ただし、日本にある外国の在外公館が作成した「婚姻要件具備証明書」などの公文書はそのまま使えます。)本物なのか偽物なのか分からない文書をもとに法的な手続きは進められません。そこで、その外国文書が本物であることを確認する工程が必要となります。

 

2-2-1-1 アポスティーユが必要な国

結婚するお相手の外国人の母国が、ハーグ条約という条約に加盟している場合は、書類に「アポスティーユ」を取得します。多くの国では、日本同様、その国の外務省の仕事としています。

 

フィリピンは2019年5月にハーグ条約に加盟しましたので、以前のように、「レッドリボン」を取得する必要はありません。インターネット上の古い情報にご注意ください。フィリピン国外務省でアポスティーユを取得できます。

 

2-2-1-2 アポスティーユを取得できない国

日本人との国際結婚が多い国の中では、例えば、中国タイベトナムなどが、2020年1月現在においてハーグ条約に加盟していません。

 

そして、これらの国の文書に求める「本物の確認方法」はバラバラなので、市区町村役場で確認しましょう。かなり厳格な市区町村役場ですと、本国の外務省で認証を受けた文書を日本に持ち込み、その文書に対して、さらに在日大使館の「再認証」を求めるケースもあります。市区町村役場が手引きとして使っている権威ある書物のなかには、実際に本国政府の認証に加えて在日大使館での「再認証」を求めることを推奨しているものがあり、あながち担当者の過剰な要求ともいえません。

 

スケジュールに余裕があれば対応できますが、事前に把握していないと思わぬところで時間をとられますので、注意が必要です。

 

2-2-2 外国文書の翻訳は自分でやってもよいの?

【解説】

はい、大丈夫です。ただし、翻訳文には翻訳者の署名が求められますので、いいかげんな翻訳は禁物です。

 

2-3.相手国の在外公館に結婚を報告しよう!

【解説】

相手国の在外公館に結婚を報告する際に必要な書類は国によってまちまちです。婚姻要件具備証明書の発行を受けるときなどについでに確認しておきましょう。

 

2-3-1 日本で成立した結婚を相手国に届け出るさいに必要な書類は?

【解説】

国によります。日本側の結婚を相手国に届け出る手続きなので、①戸籍謄本、②婚姻届受理証明書のいずれか(または両方)は必須ですが、その他に何が必要かは相手国次第です。

 

2-3-2 戸籍謄本や婚姻届受理証明書の外国語への翻訳は、自分でしてもよいの?

【解説】

日本で結婚が成立したことを証明する書類は、戸籍謄本婚姻届受理証明書となりますが、これをそのまま認証翻訳文の添付なく受け取ってくれるかは国により異なりますので、在日大使館で確認しましょう。

 

EU加盟国は厳格な手続きを必要とする国が多く、そのままでは受け取ってくれないケースが多いです。日本の市区町村役場で取得した婚姻の記載のある戸籍謄本を、①日本外務省へ持参してアポスティーユを取得し、②その書面をさらに在日大使館が指定する翻訳者がその国の言語に翻訳する必要があります。つまり、大使館指定の翻訳者以外の人が翻訳しても信用できない、というスタンスです。

 

一方で、戸籍謄本など日本側の公文書を、相手国の言語に翻訳する必要がなく、かつ、日本外務省の認証も不要である国も相当数あります。

 

2-3-3 在外公館に結婚を報告したそのあとは?

【解説】

在外公館に結婚を報告したら、その国の結婚証明書を入手します。本国政府が発行する「家族手帳」のような手帳形式のものから、在外公館が発行する書面によるものまで様々です。この相手国から発行された結婚証明書は、お相手の配偶者ビザ申請の際に必要となります。配偶者ビザの申請をしようとされている方は、審査ポイントをよく理解して申請しましょう。

 

配偶者ビザが不許可になる可能性の高い方は、次に該当される方たちです。

1)  対面での交際歴が短い >>先に読む

2)  写真などの証拠が少ない >>先に読む

3)  年齢差が大きい >>先に読む

4)  言語に習熟していない >>先に読む

5)  収入が少ない >>先に読む

6)  雇用形態が不安定(派遣社員、契約社員、自営業) >>先に読む

7)  就職したばかりである >>先に読む

8)  「主張」の一部しか「立証」されていない >>先に読む

9)  「事実」と「証拠」の結びつけが甘い >>先に読む

 

10)  「書証は語らない」を理解していない >>先に読む

11)  短期ビザからの変更を希望 >>先に読む

12)  過去 / 現在の在留状況が悪い

              12-1  留学生の出席率が悪い・すでに退学している >>先に読む

     12-2  留学生がアルバイトの時間を超過している >>先に読む

13)   離婚歴がある

14)   交際が前婚に重なっている >>先に読む

15)   お相手の家族にインターネット上でしか会ったことがない・紹介されていない >>先に読む

16)   納税していない >>先に読む

17)   今のビザが切れる直前に結婚した >>先に読む

18)   難民申請中である >>先に読む

 

■この記事を書いた人

行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)

東京都出身。慶應義塾志木高等学校慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。