更新日時:2020年6月21日
行政書士 佐久間毅
フィリピンは日本と同様に、日本先行で結婚してもフィリピン先行で結婚しても、いずれにせよ自国に結婚を登録することができます。
※中国やアメリカなどは、日本先行で結婚をすると制度上、自国で結婚が登録できなくなりますが、フィリピンの場合はその心配はありません。
したがって、日本から結婚手続を始めてもフィリピンから結婚手続きを始めてもどちらでも良いのですが、フィリピン人のお相手がフィリピンにいるのであればフィリピン国先行で、フィリピン人のお相手が日本の在留カード所有者で日本に長期滞在しているのであれば日本国先行で結婚される方の割合が比較的多いようです。
フィリピン法が要求する結婚の要件です。
日本で先に結婚手続きを進めるにせよ、フィリピン国で先に結婚手続きを進めるにせよ、いずれにせよフィリピン人が25歳未満の場合は、結婚を成立させるためにはフィリピン人のご両親に本国の公証役場や在日フィリピン大使館に出向いていただいく必要があるので少々面倒です。ただしこのプロセスはフィリピン人同士の結婚でも必要なことなので、やむを得ません。
・男性と女性が結婚当事者であり、双方が婚姻についての意思能力を有していること
・強制ではなく自由意思による婚姻の合意があること
・男女とも18歳以上であり、フィリピン家族法に定める婚姻障害に該当しないこと
・当事者が18歳以上21歳未満の場合には、婚姻について父母又は後見人の「同意」があること
・当事者が21歳以上25歳未満の場合には、婚姻について父母又は後見人の「助言」を得ていること
■フィリピン先行の結婚手続き
STEP1:日本人がフィリピンに渡航し、在フィリピン日本大使館で「婚姻要件具備証明書」を取得する
STEP2:フィリピン人の住所地の市区町村役場で、「結婚許可証」を申請する
STEP3:10日間の公示の後、「結婚許可証」を取得する
STEP4:婚姻挙行官により挙式、結婚証明書の取得
STEP5:日本側の結婚手続きを在日フィリピン大使館または日本の市区町村役場でおこなう
STEP6:日本人が日本で在留資格認定証明書交付申請をする
STEP7:フィリピン人がフィリピンでCFOのセミナーを受ける
STEP8:在フィリピン日本大使館で査証(配偶者ビザ)の申請をする
フィリピン家族法は、結婚が成立するための手続きに必要なこととして、①権限のある結婚挙行官(solemnizing officer)により結婚式が執り行われること、②市役所などが交付する婚姻許可状を有すること、③結婚挙行官の面前に当事者双方が出頭し、かつ、成人2人以上の証人の前で、互いに夫婦として受け入れる旨の宣言をすること、を定めています。
下記のステップを踏んでいただければ、このフィリピン家族法が要求する結婚の「形式的要件(手続き要件)」を満たすことができます。
フィリピン政府は、日本人であるあなたが、日本法に照らして結婚することができるのか判断できる情報をもっていません。
そこで、日本政府の出先機関である在フィリピン日本大使館が、あなたが日本の法律上結婚することができる状況にあることを証明してくれます。
この証明のために発行される書面が「婚姻要件具備証明書(Certificate of Lega capacity to Contract Marriage)」です。
なお、マニラの日本大使館だけでなく、セブ・ダバオの日本領事館でも発行されます。
◇日本人の必要書類
・戸籍謄本 1通 ※発行後3カ月以内のもの
・有効なパスポート原本
・未成年者の場合は、両親などの婚姻同意書
※離婚歴のあるかたは、その事実を確認できる改製原戸籍や除籍謄本など別途の書類が求められます。
※初婚のかたも、多くは戸籍の筆頭者は実父であるところ何らかの理由で申請人ご本人が戸籍の筆頭者となっている場合には、申請人を筆頭者とする戸籍が編成された理由を確認できる改製原戸籍や除籍謄本など別途の書類が求められます。
◇フィリピン人の必要書類
・出生証明書 1通 ※PSAまたは市役所発行のもの
★画像:フィリピン人の出生証明書(Birth Certificate)
結婚許可証は、フィリピン先行で結婚する際に最も重要となる書類です。これを取得しないと、結婚挙行官による結婚式が実施できません。
◇必要書類
・結婚許可申請書
・結婚当事者の出生証明書
・フィリピン人が18歳以上21歳未満の場合の公証された親の同意書 ※書式は地方民事登録所(LCRO)で入手できます
・フィリピン人が21歳以上25歳未満の場合の公証された親の助言書 ※書式は地方民事登録所(LCRO)で入手できます
・直近の無婚姻証明書(CENOMAR)または独身証明書(Certificate of Singleness)
・若い24歳未満のカップルは、結婚前セミナー(pre-marriage seminar)の受講証明書(家族計画や責任ある親とは何かについてのセミナーです。STEP7のCFOセミナーとは別物です)
・結婚許可証を申請する市の居住者であることを証明する身分証明書
・写真2枚(背景白)
・納税証明書(Community tax certificates)
・前婚者と死別した場合は死亡証明書
・日本人の婚姻要件具備証明書 ※STEP1で取得
・日本人のパスポートコピー
その他、状況にあわせてバランガイ・クリアランス(The Brangay Clearance)などの追加あり
アメリカ法の影響を受けているため、結婚に異議がある人がいないかどうか世間一般に公表します。
挙式が滞りなく終了した時点で婚姻は成立していますが、それを登録するため、式の後15日以内に、結婚挙行官が市区町村役場に結婚証明書を送付します。
地方民事登記官により結婚の登録が行われ、結婚証明書(Certified true copy of Marriage Certificate)を取得することができます。
この結婚証明書(Certified true copy of Marriage Certificate)はSTEP5で日本の婚姻届を提出する際に使用できますが、STEP6で日本の配偶者ビザを申請する際には使用できません。
STEP6で日本の配偶者ビザを申請する際には、PSA発行のCerificate of Marriage を使用します。
★画像:結婚証明書(Certified true copy of Marriage Certificate)
ここでは、在日フィリピン大使館に結婚を報告する際の必要書類をご説明します。
◇必要書類
必要書類4と5は、要するに、フィリピン側の結婚を創設的に成立させるために必要だった書類のコピーで、
フィリピンにおいて正規に結婚が成立したことを再度確認するための書類です。
1戸籍謄本 2通
2フィリピン人の出生証明書と日本語訳 各2通
3結婚証明書と日本語訳 各2通
4婚姻要件具備証明書写し 1通
5結婚許可証および結婚許可証申請書の写し 各1通
6パスポート
◇必要書類
★画像:在留資格認定証明書
◇総説
CFO(Commission on Filipinos Overseas)とは、外国人と婚約したフィリピン人、外国人とすでに結婚した配偶者であるフィリピン人に対して、外国への移民に関するガイダンスとカウンセリングを提供するプログラム(GCP)を実施している機関です。
このCFOが提供するGCPは、フィリピンが人身売買や「通販花嫁(mail-order bride)」を防止するために法律で要求しているものですので、受講しなければ、たとえパスポートにSTEP8で取得する日本の査証が貼付されていても、
フィリピン国の空港から出国できません。
日本人が海外に長期出国(移民)する際には同様の制度がないのでイメージがわきにくいと思いますが、
要するに、フィリピン国は自国民に対し、フィリピンを長期出国するための条件としてこのガイダンスの受講を義務付けています。
CFOのガイダンスの予約はオンラインですることができ、会場はマニラ、セブ、ダバオ、クラークの4か所です。
◇必要書類
1写真付きの有効な身分証明書
2PSOから発行される結婚証明書など
3カウンセリングおよび登録料
この他、「在留資格認定証明書」などその時の状況にあわせて追加の書類を求められます。
★画像:CFOステッカー
◇必要書類
1.フィリピン人パスポート
2.査証申請書
3.申請用写真1枚(4.5センチ×4.5センチ、上半身、無帽、背景白)
4.在留資格認定証明書原本とコピー1部
5.フィリピン人の出生証明書
6.結婚証明書
★画像:日本国査証(Spouse of japanese)
■フィリピン人との日本先行の結婚手続き
日本に短期滞在されている方には、在日フィリピン大使館は結婚関連書面を発行しませんので、フィリピン本国で書類を準備します。
STEP1:フィリピン人が、在日フィリピン大使館で婚姻要件具備証明書を取得します。
STEP2:日本の市区町村役場で婚姻届を提出します。
STEP3:在日フィリピン大使館で、結婚の報告(report of marriage)をします。
STEP4:日本の配偶者ビザを申請します。
日本の在留カードをお持ちでない短期滞在のフィリピン人は在日フィリピン大使館において「LCCM」を取得することができません。
◇必要書類(初婚のフィリピン人)
1.申請用紙
2.有効なパスポート原本とコピー
3.在留カード
4.PSAの出生証明書(フィリピン外務省認証済み)
5.PSAの独身証明書CENOMAR(フィリピン外務省認証済み)
6.パスポートサイズの証明写真 3葉
7.両親の同意書または承諾書
・両親がフィリピン在住者の場合は、フィリピン国内の公証役場で作成し、外務省で認証したもの
・両親が日本在住者の場合は、在日フィリピン大使館に両親が出向いて作成
・両親が死亡している場合は、PSAの死亡証明書(フィリピン外務省認証済みのもの)
◇必要書類(日本人)
1.戸籍謄本
2.改正原戸籍または除籍謄本 ※前婚がある場合で、1の戸籍謄本では前婚者との婚姻・離婚・死別が確認できない場合
3.有効なパスポート原本
4.パスポートサイズの証明写真 3葉
★画像:婚姻要件具備証明書申請書(Aplication for Legal capacity to contract marriage)
下記の書類があれば、その日のうちに受理されることが多いでしょう。受理された時点で法律上の結婚が成立します。
戸籍謄本に反映されるまでには、婚姻届の受理後10日前後かかることが通常です。
◇必要書類
1.フィリピン人の婚姻要件具備証明書(STEP1で取得)
2.フィリピン人のPSAの出生証明書(フィリピン外務省認証済み)と日本語訳(翻訳は当事者がしても構いません。)
3.フィリピン人の住民票 ※住民登録地以外に婚姻届を提出する場合
4.日本人の戸籍謄本 ※本籍地以外に婚姻届を提出する場合
フィリピン人と日本人の両名が在日フィリピン大使館の窓口に出向いて申請します。
◇必要書類
1.結婚届申請用紙
2.有効なパスポート原本とコピー
3.婚姻届の記載事項証明書
4.戸籍謄本 ※婚姻の記載されているもの
5.婚姻届の届出遅延供述書 ※フィリピン側への報告が、日本の婚姻成立の30日以降になった場合
6.パスポートサイズの証明写真 夫婦ともに4葉ずつ
7.返信用レターパックプラス
この他、状況に応じ追加書類があります。
★画像:婚姻報告(Report of marriage)
◇必要書類
★画像:在留カード(就労ビザ[下]から配偶者ビザ[上]への変更)
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。