更新日時:2020年6月21日
行政書士 佐久間毅
配偶者ビザの必要書類を集めはじめようとしていますが、ただ漫然と、リストに載っているものを集めるだけではマズイと聞きました。必要書類を収集していくにあたっての注意点を教えてもらえますか?
配偶者ビザ申請は、集めた書類を漠然と提出するだけでは許可はおぼつかないよ。
リストに書かれた書類を集めるだけだったら、言い方は悪いけど、大人なら誰でもできることだよね? でも実際には、許可になる人と不許可になる人がでてくる。
そもそもリストに載っている書類と一緒に「何を」提出するかと、必要書類を集めた「後」に、それをどう料理するかが勝負なんだ。
【解説】
配偶者ビザの必要書類をあつめていくにあたっては、気を付けるべきことが3つあります。順番にみていきましょう。
(1)立証書類が、自分が主張していることの一部しか立証(証明)していないのではないかをチェックする
(2)提出する書類の証明力(どれだけの信ぴょう性のある書類か)を意識する
(3)書類は、提出する趣旨を明らかにする
まずは申請全体について、「主張」と「立証」の区別が1つのポイントと聞いたのですが、どういうことでしょうか?
配偶者ビザ申請における「主張」というのは、「私たちは配偶者ビザの許可要件を満たしているから、配偶者ビザをください」というお願いのことですよね?
うん、配偶者ビザ申請で、「要件を満たしていないけど、配偶者ビザが欲しい」という主張をする人はいないから、言い分(=主張)はみんな似たり寄ったりなんだよね。
同じ主張をしているのに不許可になる人と許可される人がいて、その違いが「立証」活動にあるわけですね?
そうそう。立証とは、主張を裏づける証拠を提出することを言うよ。
入管法で立証責任は申請人側にあるとされているから、申請人が立証しない事実は、入管の審査官にとっては本当なのかそうでないのかわからない「真偽不明(しんぎふめい)」の事実だから、基本的にスルーされることになるよね。
例えば「私たちは長年交際していて、デートも数えきれないくらいしています」というのは主張に過ぎないわけですね?
第三者からしてみればどこまでが本当のことなのか、これだけを主張されても、まったくわからないんだよ。
本当は10年前から交際しているんだけど、当時は不倫関係にあって写真などの証拠を残していなかったとするよね?
そうすると、証拠がない以上、10年前から交際しているという主張は、第三者からすると真偽不明となる。
例えば、AからZまで26のデートスポットに行ったと主張しても、CとHとYに行ったことだけしか証明できなければ、
他人からしてみれば3か所だけデートに行った人と見分けがつかないということなんですね。
同じく、生計や収入面についても主張と立証は切り分けないといけないですよね?
要するに、自分たちの主張はどこまで証拠によって立証されているのかを意識しないといけないということだ。
そして、証拠と事実を結び付ける作業のことを「事実認定」と言うよ。これをするのは、入管の審査官だね。
例えば、証拠として3枚のスナップ写真を提出する場合、これによって証明できる事実とは何でしょうか?
そのスナップ写真3枚をいつどこで撮ったかによるよね?
仮にスナップ写真3枚が、すべて結婚式当日のものである場合、その写真で立証できる事実は、一般論としては、①結婚式が開かれたという事実、②結婚式の参列者だよね。
それ以外の事実、たとえば、「結婚前に真剣な交際があった」という事実はこの証拠では立証されないよね。
そのスナップ写真がすべて写真館で撮影された結婚フォトである場合は、①二人で写真館に行って結婚フォトを撮った、という事実のみが立証されますね。
3タイプの衣装に着替えてその3枚を提出しても、証拠という観点からはあまり意味はなさそうですね。
証拠として入管に提出するスナップ写真3枚が、すべて同日のデートで撮ったものである場合には、少なくとも1回はデートしたことを立証できるよね。
スナップ写真3枚が、すべて別の日に撮ったものである場合には、少なくとも3回はデートしたことが立証できそうです。
問題は、3回デートをすればすべてのカップルが結婚に至るわけではなく、むしろ3回デートしただけで結婚に至る人のほうが世間では圧倒的に少数派であるということ。
3回デートをすれば、世間のカップルすべてが結婚をするのであれば、3回のデートを立証することはすごく意味のあることですよね。
でも現実はそうではないから、3回デートをしたことを証明しただけでは、偽装婚との違いはなかなか証明しきれないと素人のわたしでも想像できます。
ただ入管がデフォルトで要求しているのは、スナップ写真3枚だけではなかったですか?
そこに誤解があるんだけど、入管がスナップ写真を3枚要求しているのは、それがあれば申請を「受付」しますという意味なんだ。
「受付」されたあとに「審査」があって、その審査に耐えられることを保証してくれないから注意してね。
スナップ写真3枚以上あれば、審査の結果が許可になるか不許可になるかは別として、とりあえず申請書類は受け取りますよ、という意味なんですね。
スナップ写真3枚を提出しても、婚姻の真実性が立証されていなければ、とうぜん不許可になるということか。
証拠については「証明力(証明するチカラ)」にも気を配らないといけませんね?
うん、いいところに気づいているよね。その点については別記事で解説するから、参考にしてみてね。
配偶者ビザ申請で入国管理局に提出できる証拠は、紙ベースに限られますよね?
うん、将来は分からないけれど、いまのところは動画や音声は提出することができないよね。
このような紙ベースの証拠のことを「書証(しょしょう)」というよ。
紙のうえに表現されていない事実は存在しないものと同じなわけで、考えてみれば怖いですよね。
配偶者ビザの申請にあたっていろいろ調べていたら、「書証は語らない」という言葉を耳にしたのですが、どのような意味なのでしょうか?
うん。これは比喩なんだけど、証拠というのは、それだけでは料理前の食材のようなもので、とても食べられたものではないという意味なんだ。
証拠はあつめたらそれでお終いではなくて、それを料理して食べられるようにしなければならないんだよ。
証拠を料理しないでそのまま入管に持っていくと、ダイコンやニンジンをそのまま丸ごとカウンターに差し出すようなもので、相手は困惑してしまう。
証拠から何が読み取れるかは証拠が自分で語ってくれるわけではないから、私たちが代弁しなければならないんですね。
そうそう。それを「書証は語らない」と表現しているんだね。
有名な裁判官もその著書の中で、「重要ですよ。立証趣旨を押さえた上で証拠を見たいですからね。証拠説明書に「立証趣旨はこうなので、ここを読んでください」と、それは書いてもらわないと。」と言っているんだけど、これも「書証は語らない」の別の表現といえるよね。(『裁判官!当職そこが知りたかったのです。』学陽書房35ページ)
本来、書証は証拠の王様のようなものだと考えられているし、ある側面はそうなんだけど、書証にもそれ特有の限界があるから、それを補強して代弁してあげる必要があるんだ。
そのことに気づいていなくて、配偶者ビザ申請に失敗する人は多いね。
私達は書証のあつかいに不安があるので行政書士さんにお願いしようと思っていますが、やはりお願いすると結果が違いますか?
膨大なケースを通じて相場を知っていることが大きいと思うよ。
相場って何ですか?
こういうケースではこういう申請をするとこういう結果を得る、ということの膨大な集積のこと。
入管は審査基準のほとんどを非公開にしているから一般の方にとってはどんな審査がなされるのか分からずブラックボックスなんだけど、行政書士はそこらあたりをかなりクリアに把握できているんだ。
関東地方だったらアルファサポートっていう行政書士事務所がダントツでお勧めだよ。実力や費用からも他を選ぶ理由がない。東京の事務所だけど名古屋や大阪、東北からの依頼もあるようだよ。
配偶者ビザが一度不許可になってしまうと2度目の申請は大変と聞きました。
それは巷でも良く言われるけど、不許可決定が組織として行われるからなんだよね。次の申請は優しい審査官にあたりますようにとかそういうお話ではないんだ。
すべての不許可通知は入国管理局長の名前で通知されるから、そのトップの判断はなかなか変えられるものじゃないんだよね。
さっきのビザ専門の行政書士事務所には公認会計士とか大学の教授とかキャリア官僚とか書類作成に精通した職業の人も多く依頼しているよ。自分でうまくやれるという判断は多くの場合は勘違いだろうね。
餅は餅屋なんでしょうね。
僕の経験上それだけじゃなくて、配偶者ビザが不許可になるとカップルの関係がギクシャクしちゃうからね。
日本の配偶者ビザが取れなければ相手の国で生活すればよいというのなら問題はこじれないけど、例えば日本人男性が日本の仕事を捨てて相手国で生活するという選択をとりえない場合には離婚にいたってしまうケースもあるんだ。
その点、女性が日本人で男性が外国人のカップルの場合には、女性が相手国での生活も視野に入れていることが多くて大きな問題にならないこともあるよ。ただ相手国の治安や将来の子供の教育を考えると日本で結婚生活を送りたいという希望は多く聞くよね。
行政書士も自分が許可不許可を決定する権限をもっているわけじゃないんだから100%の保証はできないわけだけど、ビザの窓口™がおススメしている東京のアルファサポート行政書士事務所なら、難しい案件については判例を引用するなど素人ではできない高度な申請をしてくれるよ。まずは検討してみてね。
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。