更新:2021年1月26日
行政書士 佐久間毅
日本人とご結婚されたアメリカ人のお相手が日本で生活するためには、日本の「在留資格」が必要です。
在留資格には様々な種類がありますが、一般的には在留資格「日本人の配偶者等」を取得することとなるでしょう。
この記事では、日本の配偶者ビザを日本有数レベルでお手伝いしている東京・アルファサポート行政書士事務所が、
アメリカ人のお相手が日本の配偶者ビザを取得するまでをわかりやすくレクチャーします!
記事では「日本人配偶者」とはアメリカ人とご結婚された日本人を、「アメリカ人配偶者」とは日本人と結婚されたアメリカ人をいうものとします。
日本の配偶者ビザは、日本とアメリカの両国で結婚が成立していないと原則として許可されません。
国際結婚においてどちらか一方の国でしか結婚が成立していないことを「跛行婚(はこうこん)」といい、跛行婚では片方の国ではまだ独身なので、簡単には配偶者ビザは許可してもらえません。
しかしながらアメリカの場合は、日本先行で成立した結婚は原則としてアメリカでもそのまま法的な結婚として認めてくれるので、跛行婚となるケースは少ないです。
日本先行で結婚をしたか、アメリカ先行で結婚をしたかによって、入管に提出する書面が異なります。
〇日本先行で結婚をした場合
この場合はアメリカ側の結婚証明書は取得することができないため、日本の結婚証明書である「戸籍謄本」のみを出入国在留管理局に提出することになります。
・日本の結婚証明書⇒戸籍謄本
・アメリカの結婚証明書⇒なし
〇アメリカ先行で結婚をした場合
この場合はアメリカの州が発行する結婚証明書が、アメリカの結婚証明書となります。
・日本の結婚証明書⇒戸籍謄本
・アメリカの結婚証明書⇒州が発行する結婚証明書(Certificate of marriage) ※州ごとに色・形状など書式がまったく異なります。
上図をざっとみていただいてお分かりのように、お相手が中国にいて呼び寄せる場合には3段階の審査を経ることとなります。
1つめの審査は日本の出入国在留管理局で、2つめの審査はアメリカにある日本大使館や日本領事館で、3つめの審査は日本の空港・海港で行なわれます。
どのステップでも基本的には、つぎの点が審査されますが、役所によって審査の重点・力点が異なることとなります。
・偽装婚でないことが立証されているか
・過去に犯罪や法律違反を犯していないか
・日本で暮らしていけるだけの経済力が立証されているか
どこかの審査で不許可がでますと、先のステップへは進めませんので慎重にすすめていきましょう。
Step1:出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請をする
このステップでは日本の法務省・出入国在留管理局が、アメリカ人配偶者について、在留資格「日本人の配偶者等」の要件を満たしているのかを審査します。
出入国在留管理局が、在留資格「日本人の配偶者等」の要件を満たしていると判断すると在留資格認定証明書を発行してくれます。
在留資格認定証明書が交付されるだけでは日本への入国が保証されたわけではないのですが、重要な1ステップをクリアしたことになります。
【申請先】日本の各地にある出入国在留管理局
【申請人】申請人はあくまでのアメリカ人配偶者ですが、日本人配偶者が代理人として申請することができます。
【審査の力点】
力点①:偽装婚でないことが疑問の余地なく立証されていること
力点②:収入の継続性・安定性・額が立証されていること
力点③:過去の犯罪歴・違法行為歴・・・過去に日本に滞在歴があるときは、不法就労、不法入国、不法滞在、資格外活動罪などについて調査されます。
【許可条件】
条件①:偽装婚でないことが疑いの余地がないレベルで立証されていること
偽装婚が疑われやすい典型は、ネット上ではなく対面での交際歴が少ないこと、年齢差が大きいこと、言語能力に乏しくコミュニケーションが円滑でないこと、離婚歴があること、単身者用の住居であること、などです。
条件②:収入の継続性・安定性・額が立証されていること
就職したばかり、非正規雇用、給与の額が少ないと継続性や安定性の立証に不利になりますので、理由書や各種証拠を用いて、それでも生活が成り立つことを立証していきます。
【必要書類】
・在留資格認定証明書交付申請書
・戸籍謄本
・アメリカの結婚証明書 ※アメリカ先行で結婚した時のみ
・住民票
・課税証明書
・納税証明書
・質問書
・身元保証書
・理由書
・弱点補強書面
・その他指示されたもの・準備したもの
〇許可されたら
・在留資格認定証明書交付申請が許可されると、在留資格認定証明書が交付されます。在留資格認定証明書を中国で待つ中国人配偶者に郵送します。
・在留資格認定証明書を受け取った中国人配偶者は、査証申請という次のステップに進みます。
〇不許可になったら
・不許可理由を解消した上で、再申請することが可能です。ただし一度「法務大臣」から不許可にされてしまうとその結果をひっくり返すことは大変ですので、最初からぬかりなく申請しましょう。
Step2:在外公館に査証の申請をする
このステップでは外務省の出先機関である日本国大使館又は日本国総領事館が、アメリカ人配偶者が日本入国にふさわしい人物かを重点的に審査します。
【申請先】
アメリカ人配偶者の居住地を管轄する日本大使館又は日本総領事館
・在アメリカ合衆国日本国大使館ホームページ
【審査の力点】
・主として、アメリカ国内での犯罪歴・不法行為歴
・偽装婚でないことが明確に立証されていること
【許可条件】
条件①:アメリカ人が有効な旅券を所持しており、本国への帰国又は在留国への再入国の権利・資格が確保されていること。
条件②:申請に係る提出書類が適正なものであること。
条件③:アメリカ人の本邦において行おうとする活動又は申請人の身分若しくは地位及び在留期間が、入管法に定める在留資格及び在留期間に適合すること。
条件④:申請人が入管法第5条第1項各号のいずれにも該当しないこと。
【必要書類】
・査証申請書(写真貼付 2"x 2")
・旅券
・在留資格認定証明書(原本)及びその写し
・その他指示されたもの
【所要日数】
・原則として、5業務日
・上記以外の資料が追加で提出を求められることがあります。
・結論がすぐにでない場合は、審査期間が長くなることもあります。
〇許可されたら
在外公館から、査証が貼付されたパスポートを受け取ります。
〇不許可になったら
同一目的の査証申請は不許可後6か月間はすることができませんので、不許可理由を解消したうえで半年後に再チャレンジします。
Step3:日本の空港・海港で上陸審査をうける
このステップでは、空港や海港にいる入国審査官が、最終的に中国人配偶者を入国させるべきかについて判断します。
いわば、Step1とStep2は、この最終判断を受けるための準備行為であったということができます。
【申請先】空港・海港の入国審査官
【許可条件(入管法7条1項)】
・アメリカ旅券および日本国査証が有効であること
・活動の非虚偽性・在留資格該当性
・在留期間適合性
・上陸拒否基準への非該当性
【必要書類】
・有効な米国パスポートおよび日本国査証
・EDカード(外国人入国記録)
・在留資格認定証明書
・その他指示されたもの・準備したもの
〇許可されたら
成田空港や羽田空港などの主要空港で上陸審査をうけた場合には、上陸が許可されると空港で「在留カード」が発行されます。
〇不許可になったら
上陸ができませんので、アメリカへ帰国します。
アメリカ人配偶者がすでに留学生として、会社員や経営者として日本で暮らしている場合は、日本で在留資格を変更することが可能です。
上図のように、配偶者ビザを取得するまでのStepとしては、新規入国より格段に簡潔であることがおわかりいただけます。
出入国在留管理局に申請をして、結果を待つだけなので1Stepしかありません。
しかしながらすでに日本で暮らしている中国人が在留資格を変更するほうが、新規でアメリカから呼び寄せるよりも許可されるハードルが低いと思われがちですが、そうではありません。
なぜならアメリカから新規に入国するときよりも、変更するときの方が、審査項目が多くなるためです。
ステップの数は少なくその意味ではラクですが、新規入国者よりも立証しなければならない項目が増える(たとえば「素行の善良性」や「やむを得ない特別の事情」)ので、質的にはより難しいと言えます。
具体的には、すでに在留カードをお持ちの中長期滞在者の場合は「素行の善良性」が求められ、留学生が法で定められたアルバイト時間(週28時間。時季により例外あり)を超過して働いていたりすると、資格外活動罪という犯罪であるためきわめて不利になります。
留学ビザの期限は切れていないが中退してしまっていたり、就労ビザなのに無職だったりする場合も要注意です。
ケース1:短期滞在者による配偶者ビザへの変更申請
短期滞在者による配偶者ビザへの変更申請は、入管法で原則として禁止されています。なぜなら、中長期滞在者に対して行われる在外公館における審査を回避しているからです。
ただし法律は「やむを得ない特別の事情」が立証されたときには例外として取り扱う旨が定められていますので、まずは東京のアルファサポート行政書士事務所のような経験豊富なビザ専門の行政書士に相談・依頼しましょう。
ケース2:中長期滞在者による配偶者ビザへの変更申請
【申請先】日本の各地にある出入国在留管理局
【申請人】アメリカ人配偶者
【審査の力点】
力点①:偽装婚でないことが疑問の余地なく立証されていること
力点②:収入の継続性・安定性・額が立証されていること
力点③:素行の善良性
・・・過去の日本滞在における日本での犯罪歴・違法行為歴(アルバイトの時間超過などの資格外活動罪を含みます。)
力点④:在留状況
・・・留学ビザなのに中退している、就労ビザなのに無職であるなど、「在留資格取消事由」に該当している場合はもちろんのこと、それに近づいてしまっているときに注意しましょう。
【許可条件】
条件①:偽装婚でないことが疑いの余地がないレベルで立証されていること
偽装婚が疑われやすい典型は、ネット上ではなく対面での交際歴が少ないこと、年齢差が大きいこと、言語能力に乏しくコミュニケーションが円滑でないこと、離婚歴があること、単身者用の住居であること、などです。
条件②:収入の継続性・安定性・額が立証されていること
就職したばかり、非正規雇用、給与の額が少ないと継続性や安定性の立証に不利になりますので、理由書や各種証拠を用いて、それでも生活が成り立つことを立証していきます。
条件③:素行が善良であること
過去の日本滞在において、日本の法律を犯していなかったかが審査されます。よくあるのは資格外活動罪(アルバイトでの働きすぎ)なので注意しましょう。
条件④:現在の在留状況が良好であること
現在保有している在留資格がもとめる活動をきちんと行なっているかが審査されます。留学生ならきちんと学校に通っている、就労ビザであればきちんと仕事をしていることなどです。
【必要書類】
・在留資格変更許可申請書
・戸籍謄本
・アメリカの結婚証明書 ※アメリカ先行で結婚した時のみ
・住民票
・課税証明書
・納税証明書
・質問書
・身元保証書
・理由書
・弱点補強書面
・その他指示されたもの・準備したもの
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。