更新日時:2020年6月21日
行政書士 佐久間毅
日本人と外国人のカップルです。
国際結婚することになったのですが、結婚によって私たちの名前はどう変わるのでしょうか?
教えていただけますか?
それじゃあ僕が、日本人と外国人が結婚した時の苗字の変更について、わかりやすく教えるね!
【解説】
日本人同士の結婚の場合は、日本の民法で、夫婦が同一の姓をなのる必要があるとされています。
しかし世界にはたとえば中国のように、夫婦別姓の国もあります。
日本人と外国人が結婚した場合、日本人や外国人の名前がどう変わるのか、あるいは変わらないのかを見ていきましょう。
まずは、日本人の苗字がどうなるのか教えていただけますか?
日本人の苗字だから日本の法律に従うんだけど、国際結婚の場合は、そのまま旧姓を結婚後も名乗りつづけるのが原則だよ。
わたしは今の戸籍上の名前が「佐藤明子」ですが、国際結婚した後も「佐藤明子」なんですね?
原則はね。なぜ旧姓を名乗りつづけるのかというと、お相手の外国人は戸籍をもっていないから、新しい戸籍を作るときに、どちらの戸籍上の名前に統一するのかという選択の余地がないからと説明されているよ。
でも、お相手の氏に変更もできるから、次の項目で説明するね。
【解説】
日本人同士の結婚の場合は、それぞれが別の戸籍に入っているので、夫婦の新しい戸籍を作る際に、どちらの姓をとるのかを選択することができます。
このとき、慣習上、夫の氏を妻がなのることが多いわけですが、法律上は夫が妻の氏をなのってもまったく問題ありません。
しかし日本人と外国人の結婚の場合は、外国人が日本の戸籍をもっていませんので、どちらの戸籍上の氏をなのるのかという選択の余地がなく、日本人はそのまま旧姓を引き継ぐことになります。
したがって、「佐藤明子」さんが、外国人と結婚した場合でも、原則は結婚後も「佐藤明子」を名乗りつづけます。
ただし次項でみるように、外国人のお相手の姓を名乗ることもできます。
原則としては「佐藤明子」を名乗り続けるということは分かりました。
でも、私たちは結婚後に子供が欲しいと話し合っているのですが、子供が生まれたときにお父さんの苗字とお母さんの苗字が別々だと、日本ではなにかと不便を生じる気がしています。
その場合は、結婚から6か月以内なら、市区町村役場に届を提出するだけで、日本人がお相手の外国人の姓を名乗ることができるようになるよ。
君たちの場合は彼の苗字が「ホワイト」だから、明子さんの苗字を「ホワイト」にすることができる。
戸籍の名前、つまり本名が「ホワイト明子」に変わるから、パスポートの名前も「ホワイト明子」に変わることになるよ。
【解説】
たとえば「佐藤明子」さんと「ホワイト,スティーブ(Steve White)」さんが結婚する場合、結婚から6か月以内であれば、市区町村役場に「外国人との婚姻による氏の変更届」を提出することにより、佐藤明子さんの本名(戸籍上の名前)を、「ホワイト明子」にすることができます。
結婚から6か月を過ぎてしまうと、もはや市区町村役場への届出では変更することができず、家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
日本人が外国人の姓を名乗るのではなくて、外国人が日本人の姓に本名を変えることもできるのですか?
それはお相手の国の法律によるんだよね。お相手の母国が国際結婚による姓の変更を許している場合には、その国の法律にしたがって名前を変更するんだ。
僕の知り合いでも、タイ、フィリピン、アメリカ、ドイツなど、外国人のほうが日本人の姓をなのっているケースも多いよ。
変更の仕方は国によって違うから、母国の役所か、日本にある大使館で確認すると良いよ。
本名を変える以上、パスポートの名前も変更する必要があるよね。
たとえば彼が本名を「SATO」に変えたなら、「Steve Sato」という名のパスポートを手にすることになるよ。
外国人が母国の本名はそのままに、日本で同一の苗字を名乗ることもできるのですか?
それが「通称」だね。通名と呼ばれることもあるし、通称名といわれることもある。法律上の呼称は「通称」なんだけどね。
通称とはなんですか?
通称は、住民基本台帳法施行令の第30条の16に規定があって、
「氏名以外の呼称であって、国内における社会生活上通用していることその他の事由により居住関係の公証のために住民票に記載をすることが必要であると認められるもの」と定義されているよ。
【解説】
通称名は、通称を設定したり変更することを繰り返すことにより、犯罪に利用されてきたこともあり、現在は設定するのが難しくなっています。
通称は、複数の名前で銀行口座をつくりマネーロンダリングや脱税に利用したり、携帯電話を複数加入して振り込め詐欺に利用したりといった犯罪に利用されてきたのです。
しかしながら、日本人と結婚した外国人の場合は、かんたんに設定することができるので、ご心配はいりません。
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。